圓頓妙智(えんどんみょうち)
― 完全なる悟りの智慧 ―
春は花、夏は涼風、秋は月、冬は雪。
四季の自然は、そのまま仏の教えを映す鏡である。
花の香りに無常を悟り、風の涼しさに心を澄ます。
月の光に清らかさを感じ、雪の白さに静寂を見る。
「一切皆是仏道(いっさいかいこれぶつどう)」──
すべての存在と出来事は仏の道にほかならず、
「清涼心即法身(せいりょうしんなりほっしん)」──
澄んだ心こそが、仏そのものの姿である。
この書は、天台・禅の思想に基づき、
『維摩経』や『華厳経』の一節をもとに、
自然の移ろいに悟りを観ずる心を表している。
圓頓とは「円満なる悟り」、妙智とは「すぐれた仏の智慧」。
悟りとは遠くにあるものではなく、
今この瞬間、花を観じ、風を感じ、月を賞し、雪を観ずること。
筆は柔らかくも力強く、墨の濃淡が呼吸のように生きている。
上部に配された装飾帯が静謐さを添え、
書者・若狭敬は十一月、心を鎮めてこれを謹書した。
自然と一体となる心、
すべてを仏道と観ずる悟りの境地。
それが「圓頓妙智」の教えである。
十一月 若狭敬写
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